ごあいさつ
今年も、待ちわびた花の季節がやってまいりました。
春の訪れを、ここ数年、ことさらにありがたく感じるのは私だけでしょうか。
かつてロシアの文豪トルストイは、名著『復活』の中で、人間がいかに自然に手を加えようとも「春はやっぱり春であった」と、その力強さを描きました。
しかし、それから時を経た1962年、アメリカの作家レイチェル・カーソンは『沈黙の春』で、化学物質によって鳥の声も聞こえなくなり、生命の輝きが失われた春の寓話を記し、警鐘を鳴らしました。自然がいかに繊細で、私たちの行いによって静寂に包まれてしまう可能性があるかを問いかけたのです。
カーソンがこの本を世に出してから60年以上が経ちました。幸いにも、私たちの周りから完全に鳥の声が消えたわけではありません。しかし、気候変動や環境の変化が、身近な自然にも影響を与えていると感じる瞬間は増えているのではないでしょうか。
忙しい日々に追われる現代ですが、時には立ち止まり、自然の声に耳を澄ませる時間が必要なのかもしれません。効率やスピードばかりが重視される時間(クロノス)ではなく、草花が芽吹き、花開くのをゆっくりと見守るような、自然の中の豊かな時間(カイロス)を。
オープンガーデンは、まさにそんな時間を取り戻す試みです。
丹精込めて育てられた庭には、生命の息吹と、庭主それぞれの想いが溢れています。
どうぞ、美しい花々を愛で、土に触れ、自然との対話を楽しんでください。
皆様のお越しを心よりお待ちしております。
つくばオープンガーデン代表 田中